#7 出稼ぎ労働者 Inc. -詐欺と人身売買-
in Top 25 Censored Stories for Project Censored in Japanese出典:
南部貧困法律センター(the Southern Poverty Law Center)2007年3月
表題:「奴隷制度すれすれ-米国における外国人労働者短期就労制度-」
著者:Mary Bauer、Sarah Reynolds
ネーション誌 2007年6月25日
表題:「米国への出稼ぎ」
著者:Felicia Mello
タイムズ・オブ・インディア紙 2008年3月10日
表題:「人身売買業-インド人労働者による米雇用主に対する訴訟提起-」
著者: Chidanand Rajghatta
学生調査員:Cedric Therene、Sam Burchard、April Pearce、Marley Miller
評価担当教員:Francisco Vazquez博士
米国における外国人労働者短期就労制度はブッシュ大統領から称賛され、その拡大が奨励されてきた。連邦議会において将来の移民改革モデルとして考慮される可能性も高い。しかし一方で人権擁護家は、同制度が移民労働者を極めて不当に扱うものだと警告している。労働者、組合組織者、弁護士、また政策立案者は、合法的な労働市場を開放してアメリカンドリームの一端を移民にも提供することを目的とする同制度が、むしろ何千人という人々を現代の年季奉公制度に縛り付けていると指摘している。Charles Rangel下院議員は、外国人労働者短期就労制度を「私がこれまで目にした中でもっとも奴隷制度に近いもの」と称した。
「季節労働者ビザ」とも呼ばれるH-2短期就労ビザを取得する過程で、労働者は通常おとり商法の餌食となり、短期の低賃金労働にありつくために高金利で巨額の資金を借りる必要に迫られる。(多くは持ち家を担保にする。)しかしこうして得た仕事は、ほとんどの場合約束されていたものよりもさらに短期かつ低賃金である。労働者は多額の負債を抱えながらも、ビザを申請した雇用者の元でしか合法的に働けないため、多くは造船所、森林局、また建築現場などの極めて危険かつ厳しい労働条件の下働くこととなる。勤務中の怪我に対する医療手当や法的サービスへのアクセスは与えられない。監督者はしばしば労働者が仕事を「転々とする」ことを防ぐために、労働者の必要書類を取り上げてしまう。
現行の外国人労働者短期就労制度は、農業短期労働者(H-2a)と非農業短期労働者(H-2b)の二種類に分類される。H-2a制度においては外国人農業従事者に、約束された合計雇用時間数の少なくとも4分の3の保証、無料住居、交通手当、医療手当、法的代理人などの法的保護が提供されるが、このような保護措置の多くは書類上のものにすぎない。一方H-2b労働者には、まったく何の権利も保護も与えられない。
出稼ぎ労働者の搾取は出身国での勧誘から始まる。多くの場合労働者はこの最初のプロセスにより不安定な経済状態に置かれるため、米国のあくどい雇用者による虐待の対象に極めてなりやすい。米国の雇用者はほぼ例外なく、出身国における出稼ぎ労働者の特定と勧誘を私的機関に頼っている。
斡旋業者は、渡航費、査証代、また斡旋業者の利益を含むその他諸々のコストを賄うべく、時には何千ドルにも上る料金を労働者に請求する。大半が貧困状態にある労働者は、しばしば高利の貸付を受けて費用を工面することになる。さらに斡旋業者によっては、労働者が個々の労働契約を履行することを確実にするために、家や車の権利証を担保として差し出すことを要求する。
全く規制されていない労働者の斡旋業はかなり実入りが良い。2005年だけでも121,000人以上の労働者が斡旋されており、これは数千万ドルという斡旋料を意味している。このような高利益は、労働者個人やその家族への影響をほとんどあるいは全く考慮することなく、できるだけ多くの労働者を輸入しようというインセンティブを斡旋業者や機関に与えている。
南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center)の報告によると、2005年にはH-2制度を通して約121,000人の出稼ぎ労働者(うち2分の3がH-2b労働者)が米国に入国したということだが、ネーション誌のFelicia Melloは、該当する出稼ぎ労働者数は2007年6月までに150,000人以上に上ったと報じている。また、住居の提供と賃金の保証を義務付けるH-2a制度の利用者数がここ数年横ばいであるのに対して、政府の干渉がより少ないH-2b制度は盛んになっており、うなぎ上りに上昇する雇用者側の需要に対処するために、政府が何度も上限を設定しなおした。
「H-2制度に見られる傾向として、実際には(一部で)それに取って代わるはずだった搾取的で非合法な闇の労働市場に近いシステムに退化しつつある」と、人類学者のDavid Griffithは著書の『米国の出稼ぎ労働者』(2006年)の中で述べている。「事実、このような条件の下落傾向なしには、合法の出稼ぎ労働者は米国の雇用者にとって魅力がなくなるという証拠も存在する。」
2008年3月、インドから来た500人以上の造船所労働者がルイジアナ州とミシシッピ州で、ノースロップ・グラマン社の下請け会社であるシグナル・インターナショナル社およびインドと米国の斡旋業者を相手取り、強制労働、人身売買、詐欺、そして公民権侵害の罪で集団訴訟を起こした。労働者は、連邦政府のH-2b外国人労働者短期就労制度内で人身売買事業に巻き込まれたと主張した。2006年には典型的なおとり商法により、労働許可証および米国永住権を得られるとの約束を信じた600人以上のインド人が、一人当たり最高25,000ドルを支払った。しかし米国に着いてみると不潔で危険な状態に置かれ、「21世紀の奴隷制度」とも呼ばれるH-2b外国人労働者短期就労制度の下、雇用者に縛り付けられることになった。一度は抗議活動が行われた際にシグナル社が武装した警備員を送り込み、夜明け前の手入れによって抗議者を取り押さえた。原告側は集団訴訟を強く求めると同時に、復讐心に燃える斡旋業者からインドにいる自分たちの家族を保護するようインド政府に訴えた。
出稼ぎ労働者の苦情を支持したアフリカ系アメリカ人のハリケーン「カトリーナ」の生存者に、出稼ぎ労働を奴隷制度と比較することをいかに正当化するのかMelloが尋ねると、彼は次のように答えた。「『中間航路』の話をご存知ですか?奴隷制度下ではまず奴隷商人が送り込まれ、彼らが族長と話をつけます。奴隷商人は族長に、あなたの人々を天国のような場所に連れて行くと言い、「天国」からのきれいな品物をいくつか見せます。人々は船に乗せられ、船が海に出た後に始めて自分は奴隷なのだとわかります。彼らは奴隷所有者のもとに連れて行かれ、もしも逃げれば逃亡者となります。けれども出稼ぎ労働者は…」Melloによると、彼はそこで言葉を詰まらせたが、その意味するところは明らかだった。
Mary Bauerによる追記
「奴隷制度すれすれ」が刊行されてからの1年間、米国における出稼ぎ労働者の状況に改善は見られなかった。最近南部貧困法律センターが起こした訴訟は、この点を説得力をもって例証している。
米国永住権を得られるという口約束に引き付けられたインドからの何百人もの出稼ぎ労働者が、メキシコ湾岸地域の造船所で短期間の仕事を得るために一人当たり数千万ドルを支払った。しかし2008年3月に起こされた集団訴訟によると、労働者は現地で不本意な労働を強いられ、過密状態の監視された労働者キャンプで生活することを余儀なくされた。
シグナル・インターナショナル社および斡旋業者と労働ブローカーのネットワークは、労働者から金を騙し取り、個人の意思に反してシグナル社の施設での労働を強いる計画を企てた。海洋会社および製造会社であるシグナル社は、ミシシッピ州とテキサス州に造船所を持つ。また同社は世界的軍事企業であるノースロップ・グラマン社の下請業者でもある。
自分たちの受けている虐待について苦情を申し立てるよう数名の労働者が他の労働者にも働きかけ始めると、社の警備員が夜明け前に居住地区に手入れを行い、非合法に労働者を拘束した。
ハリケーン「カトリーナ」により労働力が散乱してしまったことを受けて、シグナル社は連邦政府のH-2b外国人労働者短期就労制度を利用して、溶接工、配管工、取付工等の職種のために労働者を輸入した。2006年後半には、良い仕事や労働許可証、また米国永住権を得られると言われた何百人ものインド人が自らの将来を抵当に入れて、渡航費、査証費、斡旋料、その他費用のために二万ドルかそれ以上にもなる額を斡旋業者に支払った。
労働者の多くはそれまでの仕事を辞め、費用を工面するために持ち家や農場、宝石、またその他の貴重品を売り払った。また大勢が、一人当たり1,500ドルの追加料金を払えば、家族も米国に連れて行けると聞かされていた。
2007年に労働者が到着すると、実際に与えられるのは約束されていた労働許可証ではなく、10ヶ月間有効のH-2b短期就労ビザであることが明らかになった。労働者は、隔離され柵に囲まれた労働者キャンプ内にある過密状態の社宅に住むために、毎月家賃1,050ドルを払わされた。労働者キャンプでは、最高24人がトイレが2つしかないトレーラーを共有していた。自力で他の住居を捜そうとすると、それでも家賃は給料から差し引かれるとシグナル社の役員に言われた。クリスマスなどの稀な機会を除いて、柵に囲まれたキャンプに訪問者が来ることは禁じられていた。シグナル社の社員は定期的に労働者の持ち物を検査した。
面している現状に抗議した労働者は、国外退去にすると脅された。2007年3月9日までに、労働者たちは団結し始めた。シグナル社はミシシッピ州パスカグーラの労働者キャンプにおいて、武装警備員による夜明け前の手入れをもってこれに対応した。組織者のうち3名は数時間部屋に閉じ込められ、解雇・強制送還されると伝えられた。米国でよりよい生活を築くことを願って妻の宝石を売り払い、友人から借金した労働者のSabulal Vijayanは、思い余って手首を切った。Vijayanは病院に運び込まれた後回復した。この事件を受けて数百人という労働者がストライキを起こし、シグナル社はストライキの組織者を解雇した。
Felicia Melloによる追記
「米国への出稼ぎ」がH-2aとH-2b制度下における出稼ぎ労働者の窮状を詳述してからの1年、企業団体やブッシュ政権からの強い要請にも関わらず、議会は同制度の拡大を制定しなかった。しかしながら移民問題は依然として国政の重要事項となっている。
移民関税執行局(ICE)は昨年、全国的な手入れによって3万人以上の不法滞在移民とされる人々を逮捕した。この数は2006年の逮捕者数の倍にもなる。ICE職員はただ法を執行しただけだと述べているが、今回の手入れは新しい外国人労働者短期就労制度の支持を高めるために仕組まれたものだったと一部の移民擁護者は考えている。
2月にブッシュ大統領は、農家がより早く、またより簡単に農業従事者を輸入できるようにしながらも、労働者の権利保護はほとんどなされないH-2a制度の改正を提唱した。ブッシュ大統領の計画によると、農家は住まいを直接提供する代わりに家賃補助を労働者に提供することができる。このような手法が住宅難にあえぐ地域で機能する可能性は低い。また改正案によると、雇用主はまず最初に米国人労働者を雇おうとしたことを証明しなくてもよくなる。H-2aビザ保有者の賃金を算出する公式も変更され、これにより以前よりも給与が低くなると擁護者はみている。
法の執行を一層厳しくしながらも外国人労働者短期就労制度を支援するという両面作戦は、州レベルでも支持を得ている。不法移民の雇用に対して国内でも有数の厳しい制裁措置を設けているアリゾナ州では、州の農業従事者の不足を緩和するために、州独自の外国人労働者短期就労計画を立てることを検討している。
一方で、出稼ぎ労働者とその支持者は組織化を強化している。造船会社のシグナル・インターナショナル社で働くために、斡旋業者に最高2万ドルを支払ったインド人労働者は、永住権を約束し、また過密状態のトレーラーに住まわせておきながら法外な家賃を給与から差し引いたことによる詐欺罪で、3月に同社を訴えた。
2ヵ月後には、20人の労働者が首都ワシントンDCにあるインド大使館の近くにテントを張り、1ヶ月に及ぶハンガーストライキを行った。参加者は、事件が追求される間米国に残る権利、出稼ぎ労働者の虐待に関する議会聴聞、そしてインド人の出稼ぎ労働者の権利に関する米国とインドの二国間交渉を要求した。以後司法省は、労働者の申し立てに対する調査を開始した。
メキシコ人の出稼ぎ労働者が斡旋会社による搾取に立ち向かうことを助けた組合組織者Rafael Cruzの殺害事件は、未解決のままである。